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●2013.12.06
題名:幸せ地主になるための7つの訓え~#2
『地主』という業界の経営者であるという自覚を持ってください。
地主さんの悩みの一つである相続に関しては、戦後大きく環境が変わりました。
1898年(明治31年)7月16日に施行された旧民法下では、相続については、家督相続という制度がとられていました。封建時代の武士階級の相続に範をとって採用されたものです。この家督相続というのは、原則として、戸籍上の家の長である戸主が持っていた身分や財産を全て嫡出長男子が単独相続するというものです。全て受け継いだ家督相続人は、家の財産を守り、一族の面倒をみる立場にも立たされるため、戸主となる者はとても強い権限を持っていたのです。
この「家」という観念が、日本国内の長寿企業の礎となっているとも言われているのです。
ご存知の方も多いと思いますが、日本は長寿企業大国なのです。企業の寿命は30年という説もあるほどです。創立10周年を迎えることのできる会社は、51.6%。20周年は27.5%、30周年は17.6%、40周年は10.6%、50周年になると6.8%となり、60周年では4.4%しか残っていないというデータがあります。
しかし、200年以上存続している企業の数を世界の中で比較してみると、日本はダントツにトップなのです。インドには3社、中国には9社、アメリカには14社、オランダで200社、ドイツでは800社というデータがあります。しかし日本はなんと3100社もあるのです。営々と真面目に事業を受け継いでいく精神がここに見られます。素晴らしいことと思います。この長寿企業には共通点があります。家制度下において、血縁または養子による事業承継を行っているのです。後継ぎとして、幼少の時からしっかりと教育されただろうことも想像できます。長寿企業の共通点は、言わば家督相続につながるものがあります。
しかし、現代の日本においてもM&A、MBO等の経済活動は盛んに行われていて、血族による事業継承は激減してきております。この先、長寿企業は少なくなることが予想されます。
地主さんの相続も1947年(昭和22年)に施行された現民法の平等相続の採用により、先代の遺産は細分化されることになりました。家督相続の考えを強く主張すると、相続時に揉めるケースは大変多いのも実情です。私は、相続は公正であるべきであって、平等ではないと考えています。地主さんが、先代の財産を引き継ぎ、財産を守っていくことは大変苦労の多い事業です。また、大きな環境の変化による地主さんの対応策も年々複雑化してきています。「泣く子と地頭には勝てない」と言われたのは、もはや過去の話となってしまいました。
『地主』業の当主として、店子や借地人さんにも気を配りスピーディに手を打っていかねばならないし、他の相続人に対しても気を使っておかなければ、家を守っていくことも難しくなってしまう可能性もあります。
企業においても、経営者は社員に気を配り、お客様に気を使っていかねば、経営は成り立たなくなるのです。地主さんも経営者とまったく同じであるということを肝に銘じて欲しいと願います。カテゴリー:土地建物編